2022/11/15

増える空き家問題「換価分割」の前に 立ちはだかる超えるべき壁

カテゴリ: 住まい

パナソニック ホームズのニュースレターより、
土地資産を取り巻く税務や法律の最新情報をお届けします。

監修:パナソニック ホームズ

監修:パナソニック ホームズ

相続した家や土地を売却してお金に換えたい考えをお持ちの方にとって、空き家が増加の一途を辿っている現状を鑑みると、相続する可能性のある土地の価値を改めて認識しておかなければいけない時代がやって来ていると言えそうです。

2000年以降、全国で増加の一途をたどる空き家問題。

民間シンクタンクの調査では、住宅の除却等が進まない場合、2033年頃には空き家数は約2,150万戸。実に全住宅の3戸に1戸が空き家になってしまう可能性があるという予測も出ています。

総務省が5年ごとに行っている「住宅・土地統計調査」によれば、平成30年度10月時点でのデータによると、総住宅数に対する空き家率は「13.6%」の高率となっています。1世帯あたりに対して何戸の住宅が存在しているのかという住宅戸数のデータを見ても、1世帯につき「1.16戸」が存在している状態です。

つまり総住宅数が総世帯数を上回っており、住宅の供給が過剰ぎみであることが浮き彫りになります。2013年までは急激な上回りペースでしたが、近年でも未だ緩やかではありますが上回る傾向にあるとされています。

さらに、同じ統計で空き家率の10年に亘っての推移を見ると、地方での数値の上昇が目立つということもわかります。地方の場合、出生者よりも死亡者が多いことや、都市部への人口流出などが重なっていることが原因となっている部分もあるでしょう。

一方で、都市部は一見すると需要と供給が安定しているようにも見えますが、都心からのアクセスが少し不便な郊外の住宅地などでは、都心回帰の流れから地方と同様に空き家率が上昇している、あるいは今後上昇してくるというのが、実際の実務での感覚に近いと言えます。

こうした空き家率の増加は、相続トラブルとも無縁ではありません。

相続トラブルの「代表選手」のひとつに、「主要な遺産が不動産にかたよっているため、うまく分けられない」というものがあります。このような場合「遺産分けをお金で調整できない」というばかりでなくケースによっては「相続税を納めるお金すら準備できない」といったトラブルにもつながることがあるのです。

もしも遺産のなかに十分なお金がある、あるいは当事者となる相続人の懐に余裕があるような状況ならば「不動産を相続する人」と「お金を相続する人」ということで、うまく分けることができるかもしれません。

しかし、必ずしもそういったケースばかりとは限らないのが現実です。

十分なキャッシュが用意されていないために「遺産の不動産を売却してお金に換えて、その代金を相続人たちで分ける」という方法を検討する場合も少なくないでしょう。これがいわゆる「換価分割」という方法です。この方法で遺産を分けることに当事者相続人全員が同意をすれば、不動産の持分そのものを巡ってもめる必要はなくなります。「遺産の内訳が不動産中心で、現金が不足している」という場合には、最終的にはこの「換価分割」によるしかない…という可能性が高まってくるでしょう。

ところが、この方法にはひとつの大きな「越えるべき壁」が存在しています。

それは「不動産の売却がスムーズに進んで、初めて可能になる分け方」だという根本的なところです。さきほどの空き家の統計からも明らかなとおり、地域によっては空き家率が増え、住宅の供給が過剰ぎみで、決して「売り手有利な市場」とはいえない部分もあるでしょう。

こうした地域での不動産の売却については、買い手がつかないといった理由から今後ますますスムーズに進まないような事態も予測されます。

【相続税増税による影響】

さらに追い打ちをかけるように、2015年1月1日からの相続税の増税の影響があるかもしれません。

改正相続税法では、非課税枠である基礎控除の引き下げなどによって、相続税が実質的に「増税」となりました。これによって、年間の死亡者数に占める相続税の申告が必要な人の割合において、法改正前は約4%でしたが、法改正後の2015年以降は約8%が対象となりました。

この改正の影響で、相続税の対象となる家庭の数が大幅に増えそれに連動して「10カ月以内の申告・納税期限までに不動産を売却して、相続税を納付するためのお金を捻出しなければいけない」といったケースも危惧されています。

こうなれば、ただでさえ空き家率の上昇傾向がある地域において、さらに状況が悪化するかもしれません。相続税の納税のために「売り急ぎ」をしなければならない不動産が市場に流れてくる可能性が出てくるのです。

もともと住宅の供給過多の状況に、重ねて供給が追加されるようなことになれば、不動産の売り手側にとってもかなりマイナスの市況だといわざるをえません。

【まとめ】

様々な外的要因に対して、成り行き任せの売却という形を避けるためには、現在自身が保有している財産の棚卸が必要です。

例えば、いま死亡するとどのくらい相続税が発生し、納税資金の準備は出来ているのか、といった点を、出来るだけ早い段階で専門家に相談することが必要です。そのうえで「保有している不動産を売却するとすれば、いくらで売れるのか」を把握しておけば、将来のスムーズな承継に有効な情報となるのではないでしょうか。人口減少と空き家率の上昇が進む中、保有している不動産が、現在の価値をこの先も留めているとは限らない状況になっていると言えるでしょう。

この先、その不動産が相続人の世代にとって必要となるかどうか、ということもきちんと考慮した上で「思い立ったが吉日」といったように、早めに売却を済ませておく等の準備や整理が今まで以上に求められている局面のように思います。


 







 
取材協力:パナソニック ホームズ(株)
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その中心となるのは住宅事業と資産活用事業、そしてリフォーム事業。

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