廃除・遺留分制度・遺言の付言事項

2022/10/15

特定の相続人への「ひいき」と限界【後編】

カテゴリ: 住まい

パナソニック ホームズのニュースレターより、
土地資産を取り巻く税務や法律の最新情報をお届けします。

監修:パナソニック ホームズ

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この遺留分というのは(ひいきされなかった)相続人の生活が不安定にならないよう保護するため、なおかつ財産の公平な分配の調整のために、一定割合の財産の相続を保障する制度です。
遺言で『1億円の相続財産すべてを次郎に相続させる』と書き残しても、太郎は、1/2 の1/2、すなわち相続財産の1/4 である2,500万円を次郎に対して請求することができます。

そうなってくると「遺言で無理なら、生きている間に次郎に贈与しておこう」そんなアイデアを思いつくかもしれません。

しかし、法廷相続人に対する相続開始前の10年間の贈与は特別受益として相続財産に算定されます。
※「持ち戻し」といいます。

ですので結局、太郎は次郎に遺留分を請求することができます。
※持ち戻しを免除することも遺言で可能ですが、遺留分の算定には影響しません。

民法改正前は、生前贈与を受けた分は全て相続財産に算定されていましたが、最近行われた民法の改正により、持ち戻しの対象が相続開始前の10年間の生前贈与に限定されたので、財産の承継も多少は計画しやすくなりました。

次郎に子供がいる場合、すなわち花子の孫がいるならば、次郎をスキップして孫に財産を生前贈与する選択肢が取れます。
孫は相続人ではないので、特別受益と判断される期間が「相続開始前の1年」と短く、生前贈与してから1年以上長生きすれば、持ち戻しの対象から外れます。
孫への生前贈与なので、次郎へは直接財産を渡せないものの、太郎へ相続財産を渡さないという結論を導ける可能性はあります。

ただ、孫も太郎の遺留分を侵害すると分かって贈与を受けた場合や、孫への贈与を実質次郎への贈与と判断される場合はこの限りではありません。


3.「付言事項」で心に訴える方法

上記の通り、次郎だけに相続させるのは法的にはなかなか難しい問題です。

けれども、太郎が花子の遺言内容に納得し遺留分の主張を自発的に諦めるならば話は別です。
そうなるよう普段から話し合うのがベストですが、できなくても遺言書で思いを伝えることも可能です。

遺言書には、法的に効力を生じさせるものだけでなく、効力のない事項も書くことができます。
それを「付言(ふげん)事項」といいます。

付言事項には法的効力はありませんが、親としての思いを残すことができます。
相続人に対する手紙、といったイメージが近いでしょう。

この付言事項には、お葬式や法要をどうして欲しいのか、家訓や家業の在り方の希望、ご近所などとの付き合い方、家族への感謝の思いなど、様々なことを書くことができます。

そして、この付言事項の中には、どういう理由で相続財産を分配したのかを記載することも可能です。

もちろん花子が「太郎よ、お前は親不孝だから1円たりともやらん」などストレートにネガティブなことを書いてしまうと、遺産をもらえない太郎の怒りの火に油を注いでしまいます。

ですが、上手に言葉を選んで太郎の心に訴えかけることで、もしかしたら太郎が花子の遺言内容に納得しやすい状況を作り出せるかもしれません。
人情から生まれる問題を解決するのもまた人情、といったところでしょうか。

※2021年7月時点での法令等に基づいて執筆しています。




⾧男の太郎は主人の遺産でお金持ちだし、二男の次郎は、私の面倒をずっとみてくれているので、私の全財産は、世話になってる次郎に全て相続させたいのです。
「遺言書」を書くだけで大丈夫でしょうか?



花子さん、遺言書を残すことは大変良いことです。ただ大丈夫とは言えません。
遺留分を請求される事態も想定され残された相続人間で無用なトラブルを招くことにもなりかねないのです。
遺言の限界を理解した上で、少し工夫して、心のこもった遺言を残すことが大切です。





特別受益がある場合の「遺産分割」や「相続税申告」での注意点

~ 特別受益とは ~

ある相続人が故人(被相続人)から特別に生前贈与を受けたり、遺贈や死因贈与によって遺産をもらい受けたりすることをさします。
遺産相続で特別受益を考慮しないで法定相続分に応じて遺産分割すると、特別受益があった相続人は遺産を多く受取ることになり、相続人間で不公平が生じます。

このような不公平を解消するため、民法などでは特別受益を相続財産に加えてから遺産分割するように定めています。
※これを特別受益の持ち戻しという。

特別受益に時効はありませんが、遺留分の計算では相続開始前10年以内、相続税の計算では開始前3年以内が加算の対象期間となり、対象になる贈与、ならない贈与もあり、計算が複雑になりがちですので、注意が必要です。







 
取材協力:パナソニック ホームズ(株)
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