廃除・遺留分制度・遺言の付言事項

2022/09/16

特定の相続人への「ひいき」と限界【前編】

カテゴリ: 住まい

パナソニック ホームズのニュースレターより、
土地資産を取り巻く税務や法律の最新情報をお届けします。

監修:パナソニック ホームズ

監修:パナソニック ホームズ

「子供は平等に扱うべきで、えこひいきは望ましくない」というのは一般論として正しいとしても、人生は色々です。
「親不孝な長男よりも、よく世話をしてくれた二男にすべての財産を受け継がせたい」といった希望を持つのも人情といえるでしょう。

このように、特定の相続人にすべての財産を相続させたいという希望を叶えることはできるでしょうか。

夫がすでに亡くなり、現在資産1億円を有する母親花子が、息子太郎と次郎のうち、次郎にすべてを相続させようとしているという場合をケースに考えていきましょう。


1.「廃除」という方法

一つの方法として、長男を相続人から「廃除」する方法が挙げられます。
廃除すると文字通り長男太郎は花子の相続人でなくなってしまいます。
ただし、これが認められるには要件があり、好き嫌いだけで廃除はできません。

■被相続人を虐待した場合
■被相続人に対して、重大な侮辱を与えた場合
■推定相続人にその他の著しい非行があった場合

このような要件を満たす場合には、家庭裁判所に申し立てをして相続権を失わせることができます。

たとえば、太郎がギャンブルにのめりこみ、何度も借金を作って花子に肩代わりさせ続けた。
あるいは太郎が反社会的勢力の者と結婚し、花子が結婚に反対しているにもかかわらず、招待者として花子の名前を印刷した披露宴の招待状を、花子の知り合いや友人に送付した場合などです。

ただ、裁判所はこの相続権をはく奪する廃除というものを認めるのにとても慎重です。
憲法上、国民の財産権が保障されている兼ね合いから、国家権力の行使には慎重であるわけです。
現に、統計では2割程度しか認められていません。

暴力行為があった場合でも一過性のものとされれば認められませんし、親から金銭をだまし取り刑事事件を起こしていても認められなかった場合すらあります。
ですので、単に太郎と疎遠な関係となっているだけの場合や、太郎は嫌いいではないが、太郎の嫁が嫌いなので、財産を1円たりとも太郎の嫁のもとにはいかせたくないといった場合では、この廃除という制度を使うことはできません。


2.遺言で特定の相続人に財産を受け継がせる方法

では、遺言で次郎だけに財産を受け継がせることはできるでしょうか。

『すべての相続財産につき、次郎に相続させる』

このような遺言書を書けばよいと思われるかもしれません。
ただ、今の日本の法制度上では、特定の子供へすべての財産を受け継がせたいとの願いを込めて遺言書を作っても、必ずしもその願い通りにことが運ぶとは限りません。
それは「遺留分」という制度があるためです。
この遺留分というのは、(ひいきされなかった)相続人の生活が不安定にならないよう保護するため、なおかつ財産の公平な分配の調整のために、一定割合の財産の相続を保障する制度です。

遺言で『1億円の相続財産すべてを次郎に相続させる』と書き残しても、太郎は、1/2 の1/2、すなわち相続財産の1/4である2,500万円を次郎に対して請求することができます。





ーーー< 【後編】へつづく>ーーー




 
取材協力:パナソニック ホームズ(株)
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